【おちょやん】感想ネタバレ 第63話 一平、母と再会

『おちょやん』あらすじ(ネタバレ)第63話

 

一平の母・夕を探しに、京都に来た千代と一平。
カフェーキネマの面々に協力してもらい客に聞き込み調査。

すると、客の一人からゆう手掛かりをつかんだ。
一平の母・夕は、嵐山の旅館「夕凪」で女将をしてしているらしい。

閉店後、
「許してもらえるやろか?」
「オヤジと同じ役者やってるって聞いたらがっかりするやろうな」
と気にする一平。
「もう許してはんのと違うやろか」
千代は、もしかしたら一平と暮らしたいと思ってるかもしれないと一平を励ました。

一平は千代に「おおきに」と礼を言った。

 

翌日、血よと一平は嵐山の夕凪を訪れた。
客間に通される、千代と一平。
夕は、突然訪ねて来られて迷惑そう。
なかなか話を始められない一平に話が無いならさっさと帰れと言う。

そこで千代は、恨んでいる気持ちは分かるが一平は関係ない。許して欲しいと言う。
「連れ合いか」と聞く夕に千代は「違います。ただの役者仲間だす」と。
一平が役者をしていると知った夕は
「一平、役者やってるの。アホやなあ!」

「お母ちゃん、ほんまに堪忍」
一平は、女癖の悪い父から母を守ってあげられなかったことを謝る。
そして役者になったのは、おやじを見返してやるため。
おやじのおとはいっぺんも許したことがないと頭を下げた。
「それなのにあっちゅう間に亡くなってしもうて…罰があたったんや」

すると夕は
「あんた、な~んも分かってへん」
夕は天海に追い出されたのではない、自分が新しい男を作って出て行ったのだと答えた。

「あんたら捨てたんは、私の方や」

「嘘や…」
天海をかばおうとして言っているのだろうと言う一平に、なんであんな人かばわないといけないんだと言う夕。

天海は一平の言う通り芝居のことにしか頭になく面白くもなんともない男だった。
毎日一平の子守りばかりでうんざりして家を飛び出したのだと夕は明かす。

「ウソや!俺の覚えてるお母ちゃんはそないやない!」
と信じない一平に
「お母ちゃん、お母ちゃんうっとおしいねん」
と一蹴。

「あんたかてホンマは、分かってたんやろ。よう思い出してみいな!」

一平は自分の奥底にある記憶を辿る。
一平はお母ちゃんを追いかけてきた。
「お母ちゃん」
と一平は母を呼んだ。
しかし一平の声に重ねて、夕を呼ぶ声が。
見知らぬ男が夕を呼んでいた。
夕は一平の方を振り返るも、そのままその男といなくなってしまった。

 

一度立ち去った夕が戻ってきて、封筒を叩きつけた。
「手切れ金や!」

身請けしてくれた旦那様は京都でいくつも旅館を持っている大地主だ。
一平に気付いたら旦那様が機嫌を損ねるから早く出て行ってほしいと夕は言い捨てた。

千代はたまりかねて夕をビンタ。
「何すんねん!」
夕も千代を叩き返した。

「なんで、ホンマのお母ちゃんなのに…!」
「アンタには関係ないこっちゃ!」
揉み合う千代と夕・

すると一平は笑い転げる。
「あーおかしゅうて笑いが止まらへん」

「人って思い出したくないことは都合よう忘れるもんなんやな」

起き上がった一平は、
「あんたのために無駄金使うの腹立つさかい」
と汽車賃だけ抜き取って、封筒を突き返した。

「なんてお前が泣くねん」
一平は千代に突っ込み。

「二度と来んといて、この疫病神」
「どうかお幸せに」

一平は千代を連れて出て行った。

 

坂下千里子も泣いた!

今日は辛いー(褒めてる)。
キレイごとでは済まない家族の現実を思いっきり突き付けられましたね…。

千代も一平も、夕も、三人共真に迫る演技で…胸が痛いわ。

 

あさイチのゲストの坂本千里子さんが号泣し過ぎて化粧直ししてたの分かるー!
千里子さん、いい仕事してるわー。

 

昨日、いくつかちょっと残念な点があると言いました。
それは:

  • 千代が能天気にお母さんに会いに行こう!って言い過ぎ。出しゃばり過ぎ。
  • これまで一平の役者としての成長が描かれていない
  • だから一平の二代目襲名は説得力がない。

 

でもそれはある程度織り込み済みだったみたいですねぇ。
私も読みがまだまだ浅い。
今日の様子を見ると…。

 

千代がシズとみつえのやりとりを見て、一平もお母ちゃんに会わせれば!って思ったのは、やっぱり千代の中に捨てきれない家族への「憧れ」があるから。
自分の家族関係はレアケース、家族はもっと素敵なものだと思い込んでいるというか。そう信じたいというか…。
千代の祈りのようなもの。
でもそれは誰もが持つ家族への呪縛でもありますね。
この思い込みにより、苦しむ人も多い。
千代の思い込みぶりは、千代としては必然だしメッセージがある。

 

一平の役者としての成長が見られないという点についても、これもきっとこれから。
これまで一平は、舞台役者にしてはオーバーアクションなところがないなあと思ってたけど、きっとこの生い立ちのためね。
親の愛が薄かったせいで、自信が無いところがあって人に対して無意識のうちに壁を作ってしまうところがある。
だから、舞台上では本当の意味での感情の開放ができていないのね。
子供の時から舞台に立っているから、そつなく演技はできるけど、心からの演技、人の胸を打つ演技はまだ。

一平がここで家族と向き合うことにより、一皮むけた演技になるのでしょうが…でもハッピーな方向で単純に解決させないのがこの脚本の容赦ないところで。
通常通りの母と再会して母の愛を実感する、みたいなゆるふわのキレイごとにはせず、それどころか母の方が裏切っていたという、どうしょうもない現実に向き合わせて一平を絶望に淵に突き落とす。

このマイナスから一平は何を掴むのか、掴まないのか。
またまた凡人では分からない展開で深いメッセージを送ってくれるだろうと期待。

 

さらにこのタイミングでの一平の襲名についても。
昨日星田英利さんのブログも拝見しましたが、鶴亀の大山社長は一平が成長したかどうなんかより、話題作りのためだと。
確かに、鶴亀家庭劇は道頓堀で一番人気になっていると言うし、確かにここで一平が二代目襲名させて追い風をという狙いだと言うことね。
確かに、大山社長も天海の名を継がないなら一平を雇ってる意味無し!って言い切ってたし。

状況は納得できた。

 

描く順番の違い?
一平は役者としてはまだまだなのに話題作りで襲名を押し付けられるって構図をもっとハッキリ描いて欲しかったなあ…とは思うけど。

 

 

 

笑い転げる一平、これこそが不条理演劇の虚無感

昨日、一平の役者人生が見えないのが残念と言ったけど、それについてはここからなのね。

それにしても、胸に突き刺さったのは、一平の回想シーン。
「よう思い出してみいな」
夕に言われて記憶をたどると…
幼い一平が追いかけるが、母は振り返るも他の男といなくなってしまうシーンが蘇った。

ああ…コレ辛っ!!涙
残酷‼容赦ないー!
人って都合の悪い事は忘却してしまうところある。
すっかり忘れなくても、オブラートに包んでキレイ事にすり替えてしまっておいたりします。

一平は、その記憶のパンドラの箱を開けてしまった。

これ以上傷つかないために、自分で封印してしたのに。
なのに自分で封印したことさえ忘れてしまって。
それもこれもすべては幼いからこそのなせる業で。
ああせつない。

過去の光景を思い出した一平は、ゲラゲラと笑いながら転げまわります。
千代が激昂して夕をひっぱたく一方で、一平はまさに笑い転げてた。

この一平の姿、不条理演劇とかに見られるニヒリズムってこれだあ!と痛感。
笑いの先には虚無しかないとうか。
笑えば笑うほど空しいというか…。

大学時代に、演劇論のゼミを取っていてそこで不条理演劇を勉強したのですが、
当時の私は当時流行った小劇団が好きでオーディションを受けたこともあって、そんなご縁で第三舞台のお手伝いをしていたこともありました。
お手伝いといっても全然役立つレベルじゃなく、ただの賑やかしに過ぎないレベルでしたけどねー。
ああ、懐かしい。
いい経験させてもらいました。

で、当時、小劇団を見ながらいろいろ考えていた不条理の「笑い」が、今日のここにあるなと!
しかも不条理演劇でなくウェルメイドプレイで見事に表現。

これぞ不条理だ、虚無だ、泣き笑いだ!と一平の笑い転げる姿に感じ入ってしまいました。

そしてとてつもなく重く苦しい現実に直面してしまったよ、一平と…涙。
不条理は、筋道の立ったストーリーにこそあるんだなあ…とも。
そしてこっちこそ逃げ場がない。苦しい。

 

今週も見事な想定外

一平の襲名問題。
母に会ってこれまでのことについて気持ちの整理が付けられたら襲名できるだろうと、千代も観ているこっちも思ってました。

ま、それが一般的なドラマのセオリーだから。
我々の中に無意識レベルに刷り込まれた既成概念だから。

ところがその既成概念を見事に覆してくれましたねえ!(←褒めてる)

さすが、このドラマは毎週毎週、いい意味で裏切ってくれますが、今週はまた得に!

 

一平の描きたい家族のイメージはキレイな世界だったのに。
母と再会することによって絶望する。

 

そして千代にとっても。
自分の家族は無理だったから一平の家族には和解できると信じてたのに、またまた喪失感。
千代が夕をひっぱたいたのは、一平のためだけでなく自分の中の怒りでもあったのでしょうね。
テルヲにヨシヲに裏切られただけで辛いのに、これ以上嫌なの見せないでって。

 

ただ…千代も一平も帰った後、2人は見てなかったけど、夕も泣いてたよ。
きっといろいろ事情があるんだよ。
だからって簡単に仲直りなんてしないんだろうけど。
現実もそうであるように…。

 

家族像。一平と千代の中でどう変わる?

千之助さんも、「言っちゃったけど、もういいよね」って一平に夕のことを伝えたこと一人飲みしながら天国の天海さんに言ってました。
千之助さんの一人飲み、今頃気付いたけど、天海さんと飲んでた場所で天海さんのことを思い続けてるのね。だから一人飲みなのね…涙

天海と夕が別れた理由はもっと複雑ないろいろがありそうです。
だからと言って、ただ夕が全てをかばってるなんて優しい話ではないと思うけど。

千之助さんは、もう大人になったんだからそういう現実見せてもいいんだろうなあと覚悟したというのもある。
マットンの存在があるように、人の愛情って何かを追及するためにも。
そして千代が一緒だから大丈夫だろうとも安心してるところもあるんだろうねえ。

 

千代と一平が家族に濁りの無い優しさを求めていることに対して、千之助さんはそんなきれいごとじゃ済まないことを人生経験から知ってて。

まだまだ千代と一平は青いということなんでしょうねえ。
夕さんの思いは一筋縄ではなく。
千之助さんはそのへんのいろいろを知っていて、それを受け入れていて、その上でのマットン婆さん!

そう反芻しながらマットンを思い返すとマットンの深みが違ってくる。

 

夕さんが「あんたらを捨てたのは私のほうや!」
って言ってましたが、千代もテルヲに言ったよ…。
千代、気付けよ…。

夕さんにも、千代があの時言ったような複雑な思いがあったと信じてるよ~。
まだまだ水曜日。
あと2日あるから少しは優しく救ってあげてー。