『おちょやん』あらすじ(第84話)
一平は鶴亀家庭劇の解散を宣言。
これは大山社長の経営判断でもあった。
戦況悪化で、客足が遠いてしまい公演を打てば打つほど赤字になっていた。
儲けの無い興業は興業ではない。
千代はそれを聞いて大山社長に直談判に行くと言うが、一平は引き止める。
一平も、このまま続けるのは実際に無理だろうと思っていた。
千代の気持ちも分かるが、座員ももうボロボロ。
毎晩空襲に怯え、配給に並び、生きて行くだけで精一杯。
芝居を続けるのはムリだと。
「ここで家庭劇は幕引きです」
しかし、千代は泣きながら反対。
皆で大山社長に時間談判しに行こうと言うが座員たちも納得いかないながらも、それぞれに家族が居たり事情がある。
「ここらが潮時かもわかれへんな」
座員たちはそれぞれに疎開することに。
福冨では、みつえ達は疎開を決めた。
しかしシズは道頓堀に残ると譲らずみつえは困っていた。
そんな話をみつえから聞いていると大日本婦人会が入ってきた。
金属の供出に福助のトランペットを出せと。
みつえは奥から鍋と包丁、お金を出してきてトランペットは質に出した、疑うなら自分をこの包丁で刺してから家中を探せと物凄い剣幕でまくしたてる。
婦人会はみつえの勢いに負けて引き下がる。
トランペットは質には入れてなかった。
質に入れるはずない。
このトランペットは福助そのもの。
誰にも渡せない。
「命がけで守る」
みつえは福助のトランペットを守り切った。
千代はシズのところに家庭劇の解散話を相談。
シズは同じ商売人として大山社長を一概に責めることができないと話す。
家庭劇を続けたいと思っている自分も身勝手だと、千代自身も悩んでいた。
「どんだけしんどい時でも、思う事だけはでけます」
シズはまだ岡安の再興を諦めてはいなかった。
みつえの福助のトランペットを守る。
シズは岡安を守る。
2人の姿を見た千代は、
一平に自分一人だけでも鶴亀家庭劇を続けると宣言した。
千代に共感できず
うーーーん…。
千代、ちょっと怒鳴り過ぎ。
そして直談判、また半沢直樹のワンパターン。
あまりの一辺倒な千代の表現に入り込めない…。
千代の気丈な性格は知ってる。
鶴亀家庭劇を愛しているのも知ってる。
そして親姉弟に恵まれなかった千代にとってはこの家庭劇が全てなのは理解できる。
だから、
千代が家庭劇を捨てられないのは当然。
千代が一人でも家庭劇を続けると言い出すのは当然。
その千代の決断に賛成できないとしても、千代の考えとして共感できるはず…。
のはずが…
残念ながら共感できない。
ただの強情っ張りにしか見えない。
主人公の意志判断も冷酷に批判するという脚本家さんの意図かもしれませんが…。
でも、それにしてもこの件で主人公の思いに共感させてくれないのもどうよと思う。
今週のタイトルが「うちの守りたかった家庭劇」だから、どうせ千代の思い通りにならないんだろうけど。
でもでもだからこそ、千代の切実な思いに寄り添いたかったんだけど…。
それが見えずに、ただの強情っ張りになってしまった。
同じ意地でも、シズさん、みつえちゃんの意地には共感できるのですが…。
これじゃあ、今回のコロナ禍で、緊急事態宣言が発令されていた期間中、怖がってるのに無理矢理出勤させてたブラック企業と同じじゃんかと思ってしまった。
なぜ千代に響かないのか、考えてみます。
理由1:千代が怒鳴り過ぎ、直談判好き過ぎ
千代の性格は安定の直球型なのでしょうが…。
大山社長に言われた→直談判ってさすがに単純過ぎでは?
半沢直樹ではこのノリ受けたかもしれないけど…。
1話完結タイプじゃない朝ドラではさすがに飽きられる。
毎度、担架切って怒鳴るのも、ワンパターン化していて
「また…」と残念に感じてしまった。
こういうことがあるとする大山社長に怒鳴り込みに行くの、もう高校生じゃないからやめようよって思っちゃったしwww
そう、半沢直樹と違って朝ドラの難しいところは、長い年月をかけてヒロインを描くところ。
なので最初から、まんま同じタイミングで千代が大山社長に乗り込んでるの、成長してないなあ…って思ってしまった。
もう40近いんでしょ?大山社長の気持ちも分かりなよ…と。
だからまたやってるわと。
それに対して千之助さんの
「おもろないわ。なんもかんもじゃ」
が刺さったわ。
理由2:千代の演劇人生が描かれていない
残念ながら、家庭劇ができてから千代の役者として成長物語が描かれていない。
それも千代の気持ちに共感できない原因でもありますね。
千之助さんは役者として万太郎さんと対決したし、一平とタッグを組む様子が描かれていたけど、
千代は家庭劇の滑り出しでアドリブの才能あるらしい話を描かれただけでそれ以降、彼女の芝居に対する思いが描かれていない。
「一座は家族」それだけで役者道が描かれていなかったから。
おかげで見ているこっちは、千代にとっての家庭劇は、ただの「居場所」「箱」でしかない感覚。
千代が家庭劇を失う喪失感に寄り添えない。
そりゃもちろん、テルヲ、ヨシヲとも家族の結びつきを持てなかった千代だから家庭劇は大事なのは分かるけど、それを実感するエピソードが不足し過ぎてる。
理由3:千代の心理描写が描かれていない
気丈にふるまう千代、疑いなく家庭劇を続けるという千代に共感できない大きな原因の一つは、千代の葛藤が見えていないから。
そこに至るまでの千代の心理描写が描かれていないから。
一座全員、空襲の恐怖に怯えてボロボロっていうんだから、千代だって相当怖い筈だけど。
だから本当は千代自身、すごく葛藤しているはず。
怖くても、苦しくても、それでも家庭劇をやめられない!という千代の切実な思いが見えないのよ…。
朝ドラでは戦争は定番だから、どんなことが起こっているのか見ているこっちはすっかり詳しくなってて、千代の気持ちを脳内補完できなくはないけど、そこを描いて欲しいよ。そこがドラマでは?
理由4:戦争の描き方が箇条書き過ぎる
開戦から福助が出征するまでの流れは、ナレーションのみで淡々と進んでいました。
それ自体はこのドラマのやり方として構わないのですが、
その後も戦時中のエピソードが箇条書き的過ぎるかなあと。
今日も庶民が空爆に怯えて戦々恐々としている様子は全てセリフで片付けられてしまいましたね。
一平がもう皆ボロボロと言い。
徳利さんが家族5人で逃げ回るのもう限界と言い…。
でも口だけで、皆キレイなままだしなんだか悲壮感が実感できない。
千代ちゃんもピンクの着物だし。
シズさんも。
皆、キレイな色の着物過ぎない?
カーネーションで、戦時中は華やかな色の着物も着ちゃダメ!って大日本婦人会が取り締まってたから、それは私も知ってるよ。
理由5:千代とシズ、みつえとシズの距離感にも違和感
これはちょっと重箱の隅をつつきすぎ、うるさ過ぎるとは思いますが…。
いくらなんでも千代のシズとの距離感が、みつえを通り越して近過ぎじゃね?と…。
シズさん、みつえとは逆に実の親子だから言えないことはあるにせよ、なんか、千代がシズとそこまで本音トークしてるのが、ちょっと違和感。
シズさん、千代をアゲ過ぎでは?と…。
千代とシズさん2人のシーンが、みつえとシズのシーンに比べて多過ぎるだけだけど。
ちょっとしたところだけど、そのあたりの繊細な調整必要かも。
とはいえみつえちゃんのシーンは良き。シズさんにも共感
でもみつえちゃんが、必死にトランペットを守る姿はよかった。
半沢風の啖呵もこれならいいんでない?
演技も鬼気迫るものがあってさすがと惹きつけられました。
何を言えば、全体を通して戦争のどんよりとした空気が足りないせいで、本気で入り込めないのが残念ですが。
でも役者さんたちの演技そのものはよかった。
シズさんの頑固さも分かる。
シズさんの表情から様々な葛藤の上、覚悟を決めたというのも分かる。
道頓堀、怖いからどうにかシズさん一緒に疎開して欲しいけど。
明日、同意してくれるかなあ?
ただ、みつえちゃんとシズさんに共感できるのは、やはり、それぞれの思いがきちんと描かれていたから。
みつえちゃんの意地を見せつけられ、
シズの意地を見せつけられ、
千代も家庭劇を続けると決断する流れですが、
これでは、千代はシズの上っ面を真似して「辞めない!」って決めちゃったんだなあ~あ~あって。
残念ながらヒロインである千代の思いが描かれなくなってしまったのが原因よね、全ては。
ヨシヲが登場したあたりから、千代の芝居への思いを描く場が皆無になってしまったから、思い入れたくても思い入れられない状況。
ということで、残念ながら私は千代に思い入れできなくなってきています…。