NHK朝ドラ『まんぷく』第 26回(第 5週)「信じるんです!」感想 福ちゃん、闇市で世良に再会!

『まんぷく』第 26回( 10月30日)あらすじ

※ネタバレ含みます。

 


戦争が終わり、日本は物資の価格が急騰。
違法にお金を稼ぐ者もいたが、殆どの人は生きるのに精一杯。

克子の子ども、タカたち4人は靴磨きをするが子どもと舐められ安く買い叩かれる。
子どもたちが靴磨きをしていると知らなかった克子。
子どもたちにお金を差し出され笑顔でお金を受け取りつつも、
子どもたちに隠れて口惜しさで涙した。

 

着物を次々と売って食いつなぐなんて、まるでたけのこのような生活だと嘆く鈴。
しかし自分の着物は売らないと一点張り。
そして萬平に発明家ならこの状況をどうにかできないのかと責める。

 

しかし、あまりにも厳しい生活に、さすがの鈴もとうとう着物を売ることを決心。

福子と鈴は闇市に着物を売りに行くが、値打ち物の着物だというのにろくな値がつかない。
そこに、
「こんなヤツに着物の価値を分かれって言う方が無茶だ」
と割って入ったきた男性が。
それは、なんと世良だった!

 

世良の無事と再会を喜ぶ福子は、萬平に引きあわせようと世良を家に連れて来る。

世良は、戦争から戻り世良商事を再開していた。
とはいっても闇屋とほとんど同じ内容。
金のないヤツから安く買い叩き、金のあるヤツに高額で売りつける商売。
鈴の着物も福子達から購入した金額の3倍にして売ると言う。
その話を聞いて、悪い人だ、ずるい、不公平だと攻める、福子、鈴、克子。

それに対して、世良は、
「今は不公平の時代だ。不公平があたりまえの時代にそれに文句を言っている時点でもうあかん」
と席を立ち、萬平に、不公平の負け組でくすぶっているのが残念だと言って帰って行った。

 

萬平は、世良のたくましさを見て、
自分が世良とは違うことは分かっているが、
自分も世良のように自信を持って自分はこうだと言える人間になりたいと福子に話す。

福子は、そんな人、なかなかいないものだ。今の時代、自分の身分を証明できるものさえない人もいるんだから、今は仕方がないと言う福子に、
萬平はいきなり閃き、
「じゃあ判子を作れってあげればいい!」
と、何やら開発を思い付く。

 

『まんぷく』第26回( 10月30日)感想

今日も密度濃かったですねえっ!!

昨日の牧善之介・恵夫妻に続き、世良も帰ってきたー!
絶対に生きて帰ってくるとは確信してましたが、この日が待ち遠しかったわっっ!

しかも、いかにも世良らしい登場!
闇市でたくましく生きてました。
世良商事を再びやっていると言ってましたが、要は闇屋。
それをずるい、不公平だ、という福ちゃん達に対し、語る世良のセリフが…秀逸で!
鳥肌立ちました。
こういうのを神セリフと言うのよぉ!!

感動のあまり世良のセリフそのまま書いちゃいますが、
「あんなあ、今は不公平の時代ですわ。
戦死した人間と無事で帰ってきた人間。
抑留された人間と帰国できた人間。
戦犯にされた人間と免れた人間。
闇で儲けた人間と儲けられへんかった人間。
飢えてる人間とたらふく食うてる人間。
焼け出された人間と焼け残った人間。
…不公平が当たり前やのに、それに文句言うてる時点で、もうあかんのです」

世良のブレない生き様が凝縮しているっていうかなあ。
ここまで徹底していると、あっぱれ!
カッコいい!

そしてあの当時はまさにそう。
そして現代も、まさにそう。

あの時代を強く生きた世良から、現代の混沌にいる我々にも時代を越えてメッセージを貰えた気がしました。
善か悪か、正しいか正しくないかなんて、そんなものに振り回されていたら食われてしまうぞと。そして自分自身も自由になれないぞと。

この価値観を、武士の価値観で生きている、ぶしむすの鈴さんにぶつける。
そして、克子さんにも。
克子さん、冷静だけど所詮ぶしむすに育てられた秩序正しいお嬢様だもん。
というか、あの克子さんの凛とした現実主義自体も、武士価値観からのクリーンさ。
そして福ちゃんもね。

毅然として立派だけど、時代の流れを読んで切り替えられない。
泥臭くなれない。
こうやって武士の時代は終わって行ったんだ。
忠義だ、恩だと言っていた者は滅びて行ったんだと。
…そして、今も、そんなキレイ事言い続けてたら、たちまち食われる。

ナナコロビヤオキ実家、まさに鈴さんの価値観を引きずってるような家だった。
そして、どちらかというと衰退して行った方なので、
今日の世良の言葉に、ああまさに、これだったんだなあ!
時代の流れに乗れなかったからなんだと思いました。
そして自分の中にもそんなメンタルの弱さがあるなあと、戒めにもなった。

一方でたくましい世良さんだけど、戦地ではどんな経験、どんな思いをしたのだろうかとも。
それがあるから今一層、したたかに生きてるんだろうね。
「キレイ事言ってるヤツらは所詮あの修羅場を見てないんだよっ!」という怒りにも聞こえる。

 

世良のセリフが終わったところで、克子さんの子どもたちが靴磨きから帰って来ますが、
その子どもたちに世良が、玄関にある自分の靴を磨いてくれたら1円あげるよと言うと、克子姉さんは武士の血を引く娘らしく、毅然と
「うちの子どもの本職は靴磨きではありません」
と突っぱねます。
これぞまさしく、“武士の終焉”だなあって。
そして、この言葉を鈴さんでなく最も現実主義な克子さんに言わせた…なんとも感慨深い。
プライドなんかどうでもいい、名誉のために自殺なんてもうやめろってメッセージにもつながる。

で、ぶしむす家の中で最も大らかでニュートラルな福ちゃんが
「世良さんがいい人か、悪い人かが分からなくなってきたー!」
と頭を抱えて。
武士の価値観を捨てられるかどうかの瀬戸際の世代ね。
きっと福ちゃんは萬平さんがいるし、その価値観を乗り越えていくのでしょう。

この鈴さん、克子さん、福子さんの世良のセリフへの受けとめ方がとても素晴らしく。
世良のセリフそのものもしびれるけど、少しずつ世代が違う3人の受けとめ方の違いによって、その世良のセリフにさらに深みが増す。
見ているこちら側に、とても味わい深いものとなって心に突き刺さりました。
まさにセリフの掛け合いの妙です。
こういった感動の増幅はドラマという表現形態でしか味わえないもの。
これぞドラマ!

 

そして、世良は最後に、
「せやから最前から言うてますやろ。ええも悪いも無い。あるのは不公平だけやて」
と念押し。それをずっと黙って聞いている萬平さんに、
「さっきから黙って聞いとるけど立花君、君は僕の言うてること分かっとるはずや。
僕は残念やで。立花君が不公平の負け組でくすぶってるのが」
「早う出て来い。発明家の立花君」
と言って部屋を出て行く。

もう…これ名シーン!!!
世良のセリフだけじゃなくて。
シーン丸ごとスゴイ―!
世良さん、再登場にてこんな最高のシーンで!
中の桐谷さん、どんなに演じていて楽しかろう!
役者冥利に尽きるでしょう!
そして、このセリフを受けられる役者の皆さまもどれだけやりがいがあるでしょう!

 

世良さん、こういった突き離す形で萬平さんにハッパかけるのよね。
すごく意地悪に見えるけど、これぞ友情。

今日の冒頭の鈴さんのハッパの掛け方とは全然違うのよね(笑)。

鈴さん、着物を売りたくないっ!って自分も物は断固拒否なくせに、
「たけのこの皮をむくみたいに一枚一枚着物を売って行く生活なんてイヤっ!」
と、嘆く嘆く…。
いつまでも居候して肩身が狭いと感じないのかと萬平さんを責め、
「あなたは発明家なんでしょ!?会社がなくなったって何か皆が欲しがるものとかできないの!?」
と、きたー。

この前の土曜の来週の予告で、この鈴さんのセリフが聞こえてきましたが、
鈴さんやっぱり萬平さんを素直に応援♪ってセリフじゃなかったか~。
さすが、鈴さん。

しかも最もイヤーなタイミングで言ってくれて。
そうよね。昔の奥様、自分の状況を嘆くばかりで何も進まない人多し。
こんな感じに他人頼みだよねえ。
自分で世に出て何かを切り開いたことないから仕方ないけど。
でも「たけのこのような生活」っていう鈴さん、憎めないのよ。可愛くて。
そしてすかさずそれに受ける萬平さんも、なんだかんだ言っていいコンビでね。

そして福ちゃんも、持ち前の大らかさで家の中を和ませようとします。
連日すいとん続きでうんざりしているところ、想像力で克服しようとする。
福ちゃんらしく、物事前向きにとらえてほがらかに生き抜こうとしますが、
この福ちゃんの健気さ、素直さは、今の状況下では全く通用しないことも見せてました。

世の中が大きく変わり、善も悪も無い混沌とした状況の中で、
嘆くしかできない、
気丈に振舞っていても何も改善しない、
笑顔を絶やさないようにしても何のたしにもならない現実を、
福ちゃん家族の中に蔓延させた上での、
世良の登場。

世良の生命力、たとえ悪人だとしても、このくらいになりたい…と魅力に見えた。

純粋無垢で心を癒してくれる福ちゃん。
圧倒的な生命力で、奮起させる世良。
この二人にパワーを貰いながら萬平さんは立ちあがって行くのでしょうね。

家族としては、福ちゃん、鈴さん、萬平さんのデコボコが楽しいけど
ビジネスとしては世良、福ちゃん、萬平さんのコンビネーションで化学変化が起こりそう。
そして可知谷もどう絡むのか…。
楽しみ。

福ちゃんの存在感が薄いという批判もちらちら見かけますが…、
今後どうなるかにもよりますが、
福ちゃんはそもそも、しなやかな存在で己を前面に出してくる性格ではないし、
ここ数回は萬平さんの心の動きに焦点が当たっているので一見そう見えるだけなのでは思います。
今は、萬平さんの心を映す鏡として福ちゃんが存在していますが、
恐らくドラマが進む中でその立場が代わる代わる入れ替わり、福ちゃんのアクションが大きく目立つ時期もあるだろうと。
だからこそ夫唱婦随って感じで。

必ずしも“動”の演技、前面に出ていなければダメということでもなかろうし。
そういった意味では福ちゃんの“静”の演技は、実に情緒的で惹きつけられるものがあると思います。私は多いに楽しく見ています。
そしてストーリーそのものが魅力的で丁寧に作られているので、福ちゃんが目立たないってこと自体別に気になってないなあとナナコロビヤオキ自身は思っています。