【NHK朝ドラ「はね駒」感想】意外にも嘉助ロスが大きい件

ドラマは最終回まで一ヶ月を切ったというところですが
そこで、まさかの嘉助が死んでしまいました!

「リアルな戦況を撮影することが使命」と満州に渡りましたが、
旅順で不慮の死を遂げます。

日露戦争で旅順といえば、旅順包囲戦(二百三高地争奪戦)と言われる、日露戦争で最も象徴的な激戦地だとのこと。

 

嘉助あんちゃんが亡くなるなんて!
ここに来るまで全く思いもよらない展開で…結構ショック!

これまで嘉助の認識は、
柳沢慎吾さんがまんま素でやってるだけじゃん?笑
くらいな賑やかなお祭りキャラ。
このドラマの“ネタ”くらいな認識だったので…。
こんなトリッキーなことってあるかい!?と。

 

そしてドラマが進むにつれてすっかり嘉助に引き込まれ、
無意識のうちに嘉助推しになってたから…。
いやこの嘉助推しについても今回嘉助が亡くなって初めて気づいたくらいに
いつのまにか自然になってた。
これもまたスゴイことだなあと。

 

 

ドラマスタート当初の嘉助の存在は「やらかしキャラ」

 

嘉助は、おりんたちと共に家族とは住まず、横浜にいて時々おりんたちの住む家にひょっこりと現れる存在。

横浜で何をやってるかというと、貿易商だかなんだかよくわからないけど、新しいことに飛びついては失敗してを繰り返し。
美味しい話にすぐ引っかかっちゃう危ないキャラ。
橘家の不安材料って感じ。

 

おりんの許嫁とされていた越後屋の新之介さんにまで
おりんが結婚すれば家族だからとちゃっかり借金しちゃうし。
おかげで、おりんが結婚を断りたくても断れなくて困ることになるし。
嘉助はおりんの足を引っ張ってばっかりな感じ。

 

この役回り、柳沢慎吾だからそんな役回りなんだろうな、
柳沢慎吾ならそれしかないだろうくらいな意識で見ていました。(笑)

 

しかし、橘家は、戊辰戦争で敗れた会津藩の武家の家柄。
嘉助はその血を受け継いでいるはずなのになぜ??と思うところですが
これにも実は根拠が。

父弘次郎は戊辰戦争で二本松少年隊に属して敗れ、兄を失った過去を心の傷として引きずっています。
嘉助はこの父弘次郎の姿を見て、自分がどうにかしなくては…!
という使命感に燃えているのです。
橘家の再興を!明治の新しい時代にひと旗あげたい!と思うからこその
新しい物、新しい物を追いかけて、そのおかげのいろいろなやらかしで…。
そんな嘉助なりの根拠も分かると、この嘉助の気まぐれが健気に見える。

弘次郎とやえさんの息子だけあって最終的には正直者過ぎて商売ベタなんだろうし。
だから、やる仕事やる仕事なかなか上手く行かない。

 

 


 

 

中盤に向けて、嘉助の評価は爆上がり

しかし、ただの「お笑いネタ」だと思っていた嘉助がじわじわと存在感を増してきました。

 

まず最初に印象的だったのは、横浜で怪しい商売やってると思われていた嘉助が、横浜土産としておりんに地球儀を渡したところ。

この地球儀は、おりんの探究心を刺激し、おりんの未来への扉となります。

おりんはこの地球儀を受け取ることで「もっと世界を学びたい!」東北女学校に入りたい!とはっきりと自覚し、実行。
東北女学校への入学を果たします。

 

確かにただのお調子者ではあるんだけど、
まちがいなく橘家のパイオニアなんだよね、嘉助は。

結局はおりんや家族に迷惑掛けたりするけど、最初から家族を宛にして利用しようとしているわけでは無いのが分かるし。
素直だし、あったかいし。
危なっかしいけど家族思いに間違いはない。

で、この地球儀だから。
おりんの気持ちの一番の理解者でもあるのよ。

 

そして嘉助を完全に見直したのは、おみつのくだり。

産後の肥立ちが悪く橘家に戻ってきたおみつを嘉助は一生懸命気遣います。

滋養をつけないと!とアイスクリンを手作りしたり。
当時の会津の橘家には初めてアイスクリン。
文明開化の味。
こんなハイカラなものを食べさせてあげようと思い付くのは、
いかにも嘉助らしいセレクトですが、
結構作るの大変だと思われるアイスクリンを、
おみつのために、ただただ夢中で作る…。

おみつが可愛くて、可愛くて仕方無いのがよく分かりました。涙

 

そしておみつが、早くややこに会いたいと前向きな気持ちになって、歩く練習をしようとすると、いつもの明るい賑やかな口調で励まします。
そして、じいさまがおみつをエスコートして歩くと、嘉助が盛り上げてましたね~。
その嘉助のお祭り騒ぎぶりには、
おみつが病気だというじめじめした雰囲気はみじんも感じられず。
このあっけらかんとした明るさに、
妹を一心に気遣う嘉助あんちゃんの思いが溢れてて涙を誘います。

このおみつへの優しさに、すっかり嘉助あんちゃん推しに…。

 

弘次郎にコーヒー屋を勧めたのも嘉助の功績

おみつの死によって弘次郎は東京に居を移すことを決意。
おりんも含む家族全員で引越しをします。

 

おみつが亡くなってしまった後、茫然自失となっている弘次郎とやえさんを見て、
おりんは横浜に戻ろうとする嘉助に留まって欲しいとお願いしますが、
嘉助は意外に冷静。
自分がここに留まることは橘家のためにはならないと、
おりんの引き留めを断り横浜に発ちます。

 

コレ、一見嘉助はドライなのね~自分都合の人なのね~と見えますが、
実は嘉助はすごく自立した人ということ。
両親のことも自立した対等な存在としてリスペクトしているからこその対応。

 

おりんが一緒にいてという発想になるのは、おりんは娘で立場が違うから当然。
でも息子である嘉助は、親のそばにいることだけが親を守ることではないと考える。
本当の意味で親が立ち直るために必要なのはそれではないと。

そして嘉助は橘家の再興が使命と捉えている。
なんだかんだいって武家の子ね…。

だからそのためには内に向かってはダメ。守るだけではダメ。
外に、未来に向かわねばならない、自分がそこに切り込んで行かないとと思っている。

嘉助、自分勝手なようだけど、やはりパイオニア。
しかも橘家を背負ってのパイオニアなのよ。

 

この嘉助の生きる姿勢、何かしら弘次郎の背中を押してもいるのよね。
だから弘次郎は東京に出ることを決意。

 

そして、上京してきた弘次郎に嘉助はコーヒー店のマスターの仕事を紹介します。

 

おりんに怪しい英語学校を紹介してしまうという失敗もありますが、
それは嘉助がやっぱりお人よしで危なっかしい面でもあり。
おかげでなかなか成功できないところでもあって…。

 

でもコーヒー店のマスターを弘次郎に任せたのは、嘉助がなかなかのセンスがあるところで。

この弘次郎のマスター話は、
元々嘉助が任される予定だったマスターの職を、
映画の仕事をやろうと決意したために弘次郎にお願いすることで決まりましたが、
これが意外にも弘次郎にピッタリと合い、弘次郎の淹れるコーヒーが美味いと評判の店に。

ドラマ上、弘次郎が合うに決まってるんだが(笑)
でも、こういうしかめっつらだけど職人肌なマスターが受けるって気付く嘉助は
なかなか先見の銘がある。

このコーヒー屋のマスターになるという人生の転機は
弘次郎にとっても人生観が変わるきっかけとなります。

 

…こうやって振り返ってると、
嘉助って、
突然ひょっこり現れては賑やかして帰って行くおちゃらけ者でしかないようでいながら、
実は橘家に灯りをともす役割を果たしているじゃないのさあ!

橘家を次のステージ、次のステージへと、より広い世界、明るい世界へと誘うナビゲーターだったのね!嘉助…!

 

嘉助のお祭りっぷり、最初のうちは「何かやらかしにきたなあ!」と不安材料でしかなかったんだけど、
いつのまにかこっちも嘉助あんちゃんの顔を見るとホッとするようになってた。

嘉助あんちゃんが来るとワクワクなことが始まるな~と楽しみになってた…(;_;)

 

柳沢慎吾さん(いきなり“さん”付け)、すごいわ…!


 

 

そして嘉助は一生の仕事を見つけ、満州へ…

 

嘉助は活動写真に出会い、自分が一生かけてやりたい仕事!と確信します。

またまた新しい物好きだな!
さすが嘉助!
と、つい突っ込みたいところですが、
でも今回は違いました。

実際に見ていても、徳右衛門さん、弘次郎さん、やえさん、おりんを前に説得する時の嘉助の目は、キラキラとして真剣で。

やっと見つけたんだね~!と、
見ているこちらにも印象的に伝わりました。

 

とはいえ、応援するにもお金が無いよ。
と思ってたら、なんとみどりさんがスポンサーに。

 

そして嘉助は仲間と活動写真の制作活動を始めましたが、
日露戦争の記録映画を取ろうと満州に渡ることを決意。

タイムリーにもみどりさんが自分の子供を授かっていると知り結婚を決意。

 

当初、弘次郎もやえも、仕事か結婚かどちらかを選べと嘉助の決心に反対をしていましたが、おりんと源造の説得によって二人の結婚を許し、
嘉助は男になりに満州へ旅立ちます。

 

みどりさんも無事に男の子を産み大吉君と命名。

満州から定期的に嘉助の手紙も届き、無事な様子に家族でホッと胸をなでおろします。

戦地の様子が事細かに書かれている嘉助の手紙からは
夢を抱き意欲的に仕事に取り組んでいる様子も感じられて明るい気持ちにもなる。

もう少ししたら、映像を撮りだめて嘉助が戻ってくる。
無事に嘉助が戻ってきて活動写真が上映されれば未来は安泰…!

というところで嘉助が死んだとの知らせが!

 

このタイミングでの嘉助の死の知らせだよ。
ショック過ぎるー。

 

最近のドラマでは、構図としては嘉助は絶対に死なない枠なのに。

まだこの当時は戦争が記憶に近い人が多かったせいですかね、
こんなに近しい人が不意にあっという間にこんなタイミングで死ぬなんて。
それがまたリアル。
しかも、兵隊としてでなく記録の活動写真を撮るためという不条理な理由で…。

 

嘉助はやらかしキャラのようで橘家を照らす光だった…!

ここまで書いたとおり、嘉助はここまでで、
いい加減なヤツからすごーいいい人に、
橘家の安心材料になってたから、
そしてその嘉助がやっと人生の仕事を見つけたと
希望に溢れていたところでのコレだから…。

やえさん、みどりさんだけでなく、こっちも思いもよらずにショックが大きい。
そして日に日にショックがじわじわと広がり
今ではすごーーーい深刻なロス!!

この嘉助ロスには、
弘次郎さん、やえさん、みどりさんの反応、演技の素晴らしさが多分に貢献している部分もありますが、
しかし、ただまんまのキャラを演じているだけと見せながら柳沢慎吾もスゴイよ!と。
柳沢慎吾、スゴイ演技派だったんだ!!と感動…!!!

こうやって俯瞰して見ると、
嘉助って明治時代の文明開化の匂いを感じさせる役割もあるし、
福島の田舎から橘家の面々を外の広い世界に導きだすナビゲーターでもあるし、
なかなかの魅力ある素敵な役だよねえ。
ただのお笑いネタじゃなかったのね~
それを見事に演じ切った柳沢慎吾さんスゴイよぉ…涙!

 

「はね駒」当初はお気楽~に見てたはずでした。

スタート時は昭和61年当時臭い感じが気恥ずかしいなあとも思いながら見ていましたが、
終盤に向けてグイグイ引き込まれてます。

さすが当時の最高視聴率49.7%行っただけあるわ~。

 

今は、嘉助が亡くなったことに動揺しているさなかの橘家ですが、
ドラマ終盤に向けて嘉助のことをどう振り返るのかな。

やえさんが、「また、きっとひょっこり現れるから…」とか細い声で祈るように言うように、ひょっこり嘉助が現れることを願いたいけど…。

嘉助を振り返る部分が出てきたら涙腺崩壊すること間違いなしです。