【おちょやん】感想ネタバレ 第12回 千代、高城百合子と『人形の家』のセリフを掛け合い

乞食たちに紛れていたのは千代の憧れの大女優・高城百合子。

千代は高城百合子をかくまい岡安に連れてくる。

千代は仕事をしている最中も百合子のことが気になって仕方が無い。
慌てて戻るとまだ百合子はいた。

食事を持ってきた千代に百合子はお茶子になろうと思ったのかと聞かれる。
なろうというより、それしかなかったと答える千代。
他にやりたかったことがあったのかと聞かれるがそれも答えられず。
そこで千代は百合子になぜ役者になったのか逆質問。
百合子は自分の体の内側から「そうしろ」という声が聞こえたと答えた。

意味が分からない千代は、じゃあ今は辞めろという声が聞こえるのかと地雷。
百合子は黙り込んでしまった。

千代は百合子を励ましたい一心で
「私は、ただしようと思うことはぜひしなくちゃならないと思っているばかりです」と
初めて見た高城百合子の舞台『人形の家』のセリフを言った。

千代は『人形の家』の台本を百合子に見せ、初めて百合子の舞台を見た時の感動を話す。
そしてこの台本を読みたい一心で字を覚えたと言った。

千代がセリフを言うと、百合子は「思い出した」とセリフを返した。
本場もんはやっぱり違うと千代は感激。

千代と百合子の掛け合いは何度も続く。
最後に百合子は「もう行かなければ」と部屋を出て行った。

千代は知らなかったが、このとき百合子の所属する鶴亀株式会社の方針により百合子を映画女優に転向させようとしていた。
当時映画の世界はまだまだ。
百合子は映画に転向したら自分のやりたいことができなくなると劇場を飛び出したのだった。

帰り際、百合子は千代に、そんなにお芝居が好きなら自分でやってみたらどうか薦めた。
一生一回、本当にやりたいことをやるべきだと。

 

シズは宗助、みつえと夜店に。
宗助とみつえを待っていると早川延四郎と偶然会う。
延四郎との再会は二十年ぶり。
その間延四郎はシズに手紙を送り続けたが返事は一度も貰えなかった。
シズは今でも手紙を大事にしまってあるが、皆読まずに捨ててしまったと言った。
延四郎は、千秋楽が終わった翌日の朝会おうと言った。

 

 

 

千代の慌てっぷりがカワイイ

「うおおおおおおーーーー高城百合子ー…さん…!」
からの本日の千代ちゃん。

慌てっぷりがホント、チャーミングでほっこりする~。

幼いとき、生まれて初めて目にした舞台の人。
憧れの女優さん。
千代にとってのカリスマが目の前に!

そりゃビックリ仰天でしょう!
そしてその高揚感たるやーー!
そしてしっかり者の千代としてはなんとしても守らないと!
とまで正義感が働く。笑
その結果岡安にかくまおうとします。

千代ちゃん、確かに正しい判断です。
でもコレ、捨て猫ちゃん拾ってきたときのドキドキワクワク感にも通じるなあ笑

岡安に向かう途中の、福富のお茶子さんたちに絡まれるとき必死で誤魔化す表情やかめさんと会話するときの表情とか面白いし。
百合子を座敷に通した後、仕事を思い出して慌てて出るときふすまを乱暴に占めちゃうのも芸が細かい~。

お仕事から帰ってきたときも。
座布団閉まって大慌てで部屋に見に行きますが、ドアをバンッ!だしwww

学校から帰ってきて縁の下にかくまった捨て猫ちゃんがまだいるか慌てて確かめに行く感じ~!
カワイイ。

 

そんな千代とは対照的に、ハナさんはゆったりと笑顔で百合子さんに話しかけます。
ハナさん演じる宮田圭子さん、素敵。
いかにもお家さんって感じの風格で。
数々の舞台を見てきたから芝居を見る目もある。
芝居茶屋って、役者さんたちのメンタル面もサポートする役割もあったんですねと、ハナさんから当時の芝居茶屋の役割も察することができます。

 

高城百合子が役者になった理由

千代は百合子に役者なった理由を聞きました。
すると、百合子は

  • 男に負けたくなかった
  • 親や親せきなど頼れる人がいなかった

だから自分自身で生きて行かねばならないと!
コレは千代の境遇とも共通。
千代にとって高城百合子がロールモデルとなるのね。

でも百合子さんにとって役者となった決め手はそれだけではなく、
何よりの決め手は自分の内からの「そうしろ」という声だったと言いました。

なるほど、さすが女優!
なるべくしてなったと…!

そしてこの内なる声は、イプセンの『人形の家』のノラとも通じる。
自分の人生を自分で生きようと、自我に目覚めた女性。

 

千代、百合子と『人形の家』のセリフを掛け合い

今日は千代と百合子の掛け合いのシーンが心に刺さりました。

千代は百合子を励ましたい一心で『人形の家』の台本を見せます。

8年もの間読み込まれた台本。
表紙は黒ずみ、何度も何度もページをめくったという感じにバサバサに膨らんだ本。
表紙の角は丸まってて。
でも破れたり折れたりはしていない。
千代がどれだけ大切に持ち続けてきたかが伺える。
芸が細かい。
こういうところの小道具さんのお仕事ぶりに感動します。

読み込まれた台本を見せ、初めて『人形の家』を見た時のことをキラキラした瞳で語る千代。
そんな千代を見て、百合子はこれまで『人形の家』のことは忘れていたけど「思い出した」とセリフを言い出します。
「私には神聖な義務が他にもあります。私自身に対する義務ですよ」
千代の、芝居の世界に憧れる思いが百合子を突き動かしました。

セリフを発した百合子を千代は見上げますが…
このときの百合に吸い込まれるように見上げている千代の目!
杉咲花さん、このフリーズ感がたまらん!
そして百合子が言い終わると次のセリフがすぐに口をついて出てくる様子も。
もうこれだけで、千代がどれだけ百合子に憧れてきたか、お芝居に恋焦がれてきたかがわかる。

 

そして二人は『人形の家』のセリフを掛け合い。
千代にとったらたまらないですねえ!
憧れの憧れの女優さんとの掛け合いなんて!

千代はセリフがすっかり体に染みついている様子。
8年間、ずっと読み込んできたんだもんね。

千代は、女優としてのテクも何も持っていない。
ひどい棒読み。
でもセリフは完全に入ってる。
百合子さんが発したセリフに全て返すことができる。

千代が棒であればあるほど、8年間思い続けた千代の純粋さ、けなげさが伝わって…百合子さんの心に刺さったのでしょう。
そのおかげで百合子さん、初心に返ることができました。

映画部門への転向を命じられ改めて自分の道を考えた百合子さん。
そして自分が何をやりたいか考え始めたばかりの千代。

『人形の家』が千代と百合子の女優人生の原点となり、2人を結ぶものとなりました。
2人の共通点が『人形の家』とうのも、なかなかモニュメンタル。

 

自分の中の内なる声に気付くこと。
自分の内なる声に従い、自分自身で人生を歩むこと。

コレ、一番大切なことですが、実はなかなか難しい。
気付くことすら難しい。

この『人形の家』のセリフと百合子さのセリフを繰り返し聞きながら、自分もどこまでできてるんだろ?と、つい自分を振り返って反省してしまいました。

おちょやんの時代から100年近く経っているのに未だに『人形の家』が心に響いちゃうレベルなんだよなあと。

おちょやんの時代より随分と女性は自由に生きやすくなってきたとは思いますが…。
たとえ世の中が自由になったとしても、自分の内なる声に気付くとはなかなか難しいこと。

そして現代の方が、女性に限らず男性にとっても、なかなか追求しづらいのかもなあとも。
大正時代に比べたら、随分と民主化が進み、人の権利は守られてきているけど、自己の追求という意味ではまだ全然自由になれてない。
自由になってないどころか、いろいろな役割分担や利害関係で大正時代よりも自分が見えなくなってきているのかもしれないなあ…とも思ってしまいました。

 

千代は、百合子にそんなに好きになら役者をやってみたら?と言われて初めて役者を意識。
百合子さんのおかげで千代は自分の内なる声を自覚できそうですね。
でもどうやって実現していくのかしら~?
楽しみ!

ちなみに百合子さん、その黒いドレス姿と言い、月影先生みたい!爆