【澪つくし】感想・ネタバレ 第66話 水橋に幻滅の律子、河原畑に小説を批判される

『澪つくし』あらすじ(ネタバレ)第66話

昭和4年1月25日民政党は、張作霖爆殺事件について田中儀一首相を追及。
田中儀一首相は「調査中」と全ての質問を突っぱねた。
この事件は関東軍の策謀で満州国を制圧しようとしたもの。

 

広敷では赤川に招集令状が来て入兆は不穏な空気に包まれる。

お国のために頑張って来いと励ます久兵衛。
それに対して律子は、戦死してしまったら家族は哀しむ、喜ぶべきことではないと言った。

 

小畑は、この頃仕事に身の入らない梅木を呼び出して説教。
梅木がかをるに片思いをしていたことに気付いていた小畑はかをるのことはスッパリ忘れて仕事で勝負しろと諭した。

 

かをるは、船を浜に引き揚げるのを手伝ったり漁師の嫁としての仕事をハツラツとこなしていた。
とねにも大切にして貰い、アミとも仲良くやっている。
ツエも元気。

 

赤川が入隊した数日後、水橋に懲役二年の判決が出た。
水橋をまだ好きなのかと尋ねる久兵衛。
律子は、権力に屈服して仲間の名前を喋ったと水橋は活動家としては幻滅を感じると答えた。

 

律子は、かをると惣吉をモデルに描いた小説を沖田たち芸術家に見せた。
沖田と宍戸は初めて書いたとは思えないと律子の小説を絶賛。
しかし作家の河原畑には裕福な生まれ育ちの律子がプロレタリア文学を書く資格が無いと批判を受ける。

 

夜、吉武家のかをるが文吉の様子を見に行くと、動けないはずの文吉が姿を消していた…。

 

 

赤川に召集令状が

昭和4年張作霖爆殺事件について当時の首相田中儀一が追及を受ける。
世の中不穏な空気に包まれ始めました。

昭和3年に起こった張作霖爆殺事件は、関東軍が満州を制圧しようとしたものですが、天皇の許可なく行ったことなのでこの時点では関東軍の犯行とは認めず。
この真実は終戦後に明らかになります。

この張作霖爆殺事件を機に中国と関東軍の対立が明白となり満州事変へとつながるそうです…。

 

そして入兆にも広敷の赤川に召集令状が。
これまでの陽気な広敷の連中には見られない、重苦しい空気。
1人目の招集令状が来たときの、皆がどう取っていいか分からない、静かな動揺がリアルに感じられます。

これまでは戦争と言っても、軍人さんたちが異国でやっていること。
半分他人事だったことが、一通の赤紙でいきなり現実を突きつけられて…。

国のためなら仕方がない。
だから笑って送り出すしかないという男たちの考えも健気です。

その一方で律子さんは、めでたいことじゃない!と。
名誉だとかでごまかすなと言って空気読めない。
哀しむべきなんだと。
「君死にたまふことなかれ」
ですね。

律子さんの言い分は真実ですが、この場では空気を読めないだけになってしまうのが空しい。
空気を読むのが得意な日本人は、こういった声を排除してしまうことが多い。
それで戦争に向かったのですよねえ。

今でも空気を読むことばかりを優先して本心とは程遠いところに行ってしまうこと、何事においてもあるあるです。

律子さん、戦争が始まったら「なるべく弾の当たらないところへ隠れて」と赤川にアドバイス。
そういうところは、律子さんは心底純情で優しい。
ただの理想主義者の自己顕示では無い。
律子さんの言葉を聞いた時の赤川の表情、心に刺さりました。
本当は律子の言葉にすがりたい。
…でも軍歌を歌い出して自分を鼓舞。

こうやって赤紙を貰った人は皆、自分を無理やり奮い立たせて戦地に向かったのだろうと思うと胸が締め付けられます。

 

律子は水橋に幻滅

水橋に懲役2年の判決が出ました。

世の中逆に回ってるんだから諦めなさいという久兵衛さん。
久兵衛さん、水橋のこと、社会主義運動を単純に「思想犯」「アカ」といって全否定しているワケでもないのね。
今の世の流れに反しているから今は表に出るべきではないと。
命を守るためにはそれも大事。
さすが経営者。

久兵衛さん、前に律子やかをるの見合い相手に政治家はNGと言ってました。
これからはキレイごとでは済まないからと。
国がこれから戦争に向かう可能性があるからだけでなく、思想の対立と排除も予感していたのですね。

 

律子は、水橋が権力に屈服して仲間の名前をペラペラ喋っちゃたことに幻滅。
活動家のリーダーとして殉教者になって欲しかったと言います。

さすが、頭でっかちの理想主義者。
若く、青いなあ~。
「自由」と「平等」、まだまだ日本には存在せずで、律子さんにとっては本で知った憧れの世界。
そしてまだ律子さんは若く人生経験も浅い。
そして律子さんはこれまで命の危険にさらされるような思いもしたことがない。

その一方で、当時に人々には武士道精神もまだ色濃い。
律子さんは“自決”の美学を刷り込まれて育っている時代の人間。
だから“殉教”殉教を美しいことととらえがち。

まさに久兵衛さんの言う、“インテルの罹るハシカ”に罹患中…。

赤川には「なるべく弾の当たらないように逃げて!」というのに、水橋には「殉教して欲しかった」と言っちゃうんだからwww
いかにも“インテリの罹るハシカ”らしい、矛盾した言動。
ジェームス、皮肉が効いてます。

 

逆に久兵衛さんの方が、権力に屈するのも仕方ないと、水橋に共感。
人生経験豊富な久兵衛さんの物の味方の方が正しいですね。

律子と久兵衛さんの反応の対比も皮肉で面白い。

 

…時代が時代だったら、久兵衛さんは水橋のことも気に入ったんだろうな。
水橋さん、今だったら頭脳明晰で温厚な、信頼の厚い政治家になれたはず。
久兵衛さんの自慢の婿になっていただろうと思います。
そう思うと、律子さんはつくづく悲しい。

 

河原畑は律子の小説を批判

今日印象的だったのは、律子の小説への河原畑の反応。

律子さん、一気に小説を書き上げたのね~!
かをると惣吉の結婚について、律子さんもノリノリだったから~笑

沖田と宍戸が律子の小説を褒めちぎる一方で河原畑は批判。
醤油屋の娘で“乳母日傘(おんばひがさ)”で育った律子がプロレタリア文学を描くのはどうかと。

わざわざ貧乏設定にしてリアリズムで書くのはおかしいと。

確かに。
労働者に実感のない律子さんに、その設定では上っ面の張りぼてになってしまいますねえ。

久兵衛パパにお遊びみたいに言われていたのも重なる。
律子さんがこれまで広敷の小浜にも、店の梅木にでさえ横暴な態度だったのも重なる。

こういった真を突いた言葉、これまで律子が見下していた河原畑に言わせたのも何とも。
久兵衛さんに言われるよりも律子にはグサッと来たハズ。

ただ…河原畑は「資格が無い!」と言い切っていました。
しかし当時の労働者は自分たちが不当な扱いを受けていると気付くことができない程に知識も教養も無。
このインテリ達の発信に頼るしかないという皮肉な構図だったのですよねえ。

律子さんのハシカ、どうやって治癒?
律子さんは、どうやって自分の殻を打ち破るのだろうか。

かをるの幸せいっぱい、希望がいっぱいの新婚生活が描かれている分、律子の葛藤が苦しく思いですね。

 

吉武家では惣吉の父・文吉が行方不明…!

かをるが文吉の部屋へ行くと、寝たきりの文吉がいなくなっていました!

当初、惣吉のお父さん、ただのモブだと思ってた~ww
でも惣吉のお父さんなのにモブ?とも疑問でした。

演じられている飯沼慧さん、調べたら見たことある顔の俳優さんでした。
時代劇を中心にご活躍だったようです。
実力派。

やっぱりモブじゃなさそうだわ~と思ってたらキターーー!

なんと行方不明と!
思いもよらぬ展開…!
歩けないはずなのに…!!!

これは…『科捜研の女』パートか!?!?

いや、それは置いといて!

昨日、文吉さん「海で死にたい」って言ってたもんね…。
お正月に浜に行って海が恋しくなっちゃったかなあ。涙
あのセリフ、惣吉さんもそう思ってる?と惣吉さんの身の上に関するフラグかとドキッとしましたが、そうではなく文吉自身のことで…?

いや!
でも文吉さんは寝たきりのはず。
これには第三者が…?
犯罪…!?

いきなりサスペンスモードぶっ込んできたわ!
やっぱり『科捜研の女』だわ!

かをるラストで文吉の失踪にどうしていいいか分からず途方に暮れていましたが、
「マリコさん、どうした!もっと布団とか部屋中確認しないと!」
「マリコさん、もっと冷静に!まだ科捜研新人時代?だから仕方ない?」
と、ついついやきもきしてしまいました…。