【『澪つくし』感想】第31話 輸血の歴史について調べてみた

入兆では本妻千代が喀血

第31話では、かをるが惣吉との逢引きに向かおうとしたところで千代が喀血。
入兆では大騒ぎとなり、かをるは惣吉に会いに行くどころではなくなってしまいます。

 

広敷では献血キャンペーン

医師の指示を受け、広敷では頭の神山が広敷の連中を招集して輸血のお願い。
まずは血液型を調べてO型だったら千代に輸血する血液を提供してほしいと皆に話します。

このシーンでのセリフがなかなか興味深い。
そうかーこの頃はまだ輸血が一般的に知られてなかったのねえと思い知らされました。

広敷での輸血についてのセリフのやりとり

広敷でのセリフのやりとりは以下の通り。

神山「この中に自分の血液型知ってる者はいないか?」
さんま「血液型って何なの?」
猪熊「血の種類じゃない?濃い口とか薄口とかさ」
佐々木「醤油と一緒にすんな!」
神山「血の種類に違えねえがAとかBとかに分かれてるんだ」

 

わわわーまだ血液型も知らないんですねえ~!

 

今西「頭!それなら分かります。俺はBです」
神山「どうして分かるんだよ」
今西「前に漁師とケンカしまして腹をモリで刺されて死ぬところだったんですけど輸血ってものをして助かりました」
神山「そうそう、その輸血の話をしてんだ」

 

輸血話にも醤油屋VS漁師のケンカをぶっ込んでくる、ジェームスきめ細かっ!
皆の前で説明してる頭の神山さん自身も、血液型とか輸血とか意味わからんけどプライドで一生懸命取り繕ってるのもカワイイ。

ちなみに、このシーン、ドリフみたい!
ドリフの学校コント!
ってことは頭の牟田悌三さん、いかりや長さんみたいだー笑

 

で、今西以外に自分の血液型を知っている者がいるかと聞かれると、一同シーン。
全員診療所に行って血液型を調べてもらうようにと神山が言うと、一同疑問がムクムク。

 

赤川「調べてどうするんです?」
頭「O型の者がいたら正直に申し出ろ」
殿岡「O型はバカだとか手癖がわるいとか分かるんですかい?」

一同、動揺しざわめく

神山「そうじゃあねえ!実は奥様のご病気が悪くなって輸血をしなきゃなんないかもしれねえ。奥様はO型なんでO型の血が要るんだ」
女A「じゃあ私はダメだ」
女B「何でよ?」
女A「だって私、大型じゃなくて小型だもの」

…プッ。
おやじギャグだけど、大真面目なんだよ。仕方ないよ笑。
それ聞いて周りも「あー」って頷いてるし笑笑。
そうよね、血液型はおろか、アルファベットだっておぼつかないんだもんねえ!

で、小浜に「大型」じゃなくて「O型」だと教えてもらってアルファベットのことだと一同理解。

そして次は輸血そのものにも疑問がムクムク。

さんま「輸血ってどないしまんねや?」
猪熊「恐らく注射器で血ば抜いて相手さぶっこむんだな」
さんま「そんなことしたら死んでまいまんねや、あんた!」

と一同騒然。

さんまが、抜かれる血液の量について「どれぐらい抜きまんねん?」と質問すると、
神山「…一升は…抜かねえだろう」
とおぼつかない答え。

「えーーーー!一升もぉっ!?」
一同パニック!
神山さんも一升とかっていい加減過ぎるし笑
分かってないから仕方ないけど笑笑

で、みんながわあきゃあ言ってると、困っちゃた神山さんは
「旦那様と奥様にご恩返しする気はないのか?注射ぐらいなんだ!」
と恩返し論を展開。
さすが日本だわ。
このつい精神論を怒鳴って封じ込めようととする感じがザ・昭和。
そしてやっぱり長さんみたい笑

 

とりあえず、ご恩返しでO型は血を提供することとして、さらに皆の疑問が。

「男の血を女子に入れても大丈夫ですか?」
「妊娠しねえかな?」
「あ!それなら大丈夫だべ!」
と、奥様は40超えてるだろうから大丈夫だという。
一同納得。

…って納得するなー爆
やっぱりドリフみたいだ。

でも皆のあまりに大真面目なやりとりを見ていると、ついこっちも「あ!そうよ、男性から女性っていいの?」「妊娠しちゃう?」とちょっと不安になってくるよ…爆

さらに、広敷の人間の薄汚れた血を奥様に差し上げるなんて恐れ多すぎるという意見も。
一同そうだそうだってなっちゃう。
さんまも、広敷者の血をあげたら奥様が飲む打つ買うをやるようになっちゃうと…。

さすが不浄を嫌う日本人。
そうだよね、確かにあげたり貰ったりって抵抗ある。

 

血液型はいつ発見? 輸血はいつから?

澪つくしの時代は昭和元年=1927年ですが、当時の一般庶民の血液型や輸血の知識ってまだ全然だったということですねー。

そうよね。明治維新から100年たってないんだもんね。
西洋医学の医者にかかるなんて一般庶民は滅多にできなかったんだろうし。

輸血ってつい最近始まった話だったのね…とちょっと興味を持って調べてみました。

 

古代から血液は生命の源

血液は古代エジプトやローマ時代の頃から生命の源とされ、若返りや病気回復の妙薬として利用されていました。

初めての輸血は17世紀

初めて輸血は1667年。
貧血と高熱の患者に子羊の血を投与したのが始まりだそうです。

子羊の血いっ!?
ウゲッ!
しかし4人目の患者が激烈な副作用により死亡し、それ以降輸血は禁止。
18世紀まで輸血の記録は皆無だと。

…って、3人は死なないで済んだってことぉ!?
それ自体がビックリなんですがああっ!

 

19世紀に初のヒト→ヒト輸血

初めてのヒトからヒトへの輸血は1827年。
ロンドンの産婦人科医が弛緩出血で瀕死の状態の産婦10数名に夫の血を輸血。若干名の命を救えたと。

当時はまだ血液型も発見されていない、抗凝固剤も消毒法も未開発。
成功率は極めて低かったようです。

初めての輸血が動物からっていうの大ショックですが、血液型も分かってない状態で輸血なんて…恐ろしい!
今にしたら無謀すぎる!!!!
僅かに輸血の効果のあった人は、夫と血液型がたまたま同じだったってことだよねえ!
もうすごい当てずっぽう。
それって宝くじじゃんかよぉ…涙

 

1900年 血液型発見

1900年 オーストリア ウィーンでヒトには少なくとも3つの血液型が存在すると発見。翌年にはAB型が追加。
そして1940年には同じ血液型でRH型が発見されました。

 

輸血の確立は1914年-1915年

1914年ー1915年にクエン酸ナトリウムが血液の抗凝固剤として使えることが分かり、それにより血液の保存が可能に。
第一次世界大戦に保存血を使用し輸血が確立されました。

輸血が確立されたのは第一次世界大戦のときって、そりゃそうなんだろうけど皮肉なものですね。

その後、1937年に血液銀行が設立され保存血の供給がされるようになったそうです。

 

千代の輸血は当時の最新医学

1915年に保存血が可能となり、第一次世界大戦で輸血が普及。
第一次大戦のの終戦が1918年なので、澪つくしの昭和元年はそこから10年未満。

まだ一般庶民には馴染みの無いものだったのでしょうね。
そして、超最先端の高度医療でもあった。

さすが入兆、坂東九兵衛!
確かに「金に糸目は付けない」って言ってたもんねえー!

そして、当時の現場の職員は、アルファベットにもピンとこない。
いかに無教養だったか。
教育の格差が違うとこんなに差が出るんだと思い知らされました。

 

参照:一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会「輸血の歴史」