池田理代子『ベルサイユのばら』は、女性の生き方論でもある

もう日本人なら誰もが知っているといっても過言ではない『ベルサイユのばら』。間違いなく少女マンガの金字塔です。ナナコロビヤオキにとって生まれて初めて読んだ少女マンガです。

『ベルサイユのばら』のストーリー

いまさら説明するまでもないでしょうが、一応、軽く。

時代は18世紀。フランス革命前夜のベルサイユが舞台。オーストリアからフランス王家に嫁いだマリー・アントワネットと、近衛兵としてマリーアントワネットに仕える男装の麗人オスカル・フランソワ。二人の生き様を軸にフランス革命に向かう当時のフランスを描く歴史大河ロマンです。

『ベルばら』は、初めて読んだ少女マンガ!

ナナコロビヤオキが初めて読んだのは幼稚園か年長~小2の頃だったと思います。

当時週刊マーガレットで連載中でした。ナナコロビヤオキの9歳上の姉がちょうど少女マンガに夢中な年頃で、おかげで我が家に『ベルばら』単行本が着々と買い揃えられていきました。そんな環境の中、ナナコロビヤオキは幼児の頃より『ベルばら』を読んでいました。

初めて読んだときは、もちろんストーリーはほとんど理解できず。コマの読み方すら分かってなかった。でも絵の美しさに圧倒され、夢中になって繰り返し読んだのを覚えています。何度も繰り返し読んでいるうちにマンガの読み方を習得していったな。

当時お絵かき大好きだったナナコロビヤオキにとって西洋のお姫様は憧れ。日々お姫様のぷっくりドレスをいかに美しく描くか探求していたので、マリー・アントワネットの豪華絢爛ドレスにキャーーーーっ!!!! と心を奪われ、『ベルばら』をお手本にお姫様を描いてました。とにかくあの絵は憧れでした。

それとオスカル様がとにかくカーーーーッコイーー♪とも。

その後、小3か小4くらいにストーリーがある程度理解できるようになってくると
「オスカルって架空の人物だよねえ? 歴史上の人物と史実を絡めて、よくここまで活き活きと描けるなあ!」
と、幼な心にもフィクションとノンフィクションの混ざり具合が心底スゴイ! と驚嘆していました。

そしてその後も、折に触れ何度も読み返し、大人になっても読み返し…この作品を様々なタイミングや視点で味わってきました。

『ベルばら』は社会現象を巻き起こした革命的少女マンガ

少女マンガで、このような本格的歴史モノが描かれるのは初めてのこと。当時の少女マンガ界において革命的な出来事でした。

そして深く読み応えがある大人の内容に、読者は少女の枠を超えて社会現象に。少女マンガの文化的位置づけが一気に格上げされました。

ナナコロビヤオキが初めて手に取ったのは、そんな“ベルばらブーム”の真っ只中。

ナナコロビヤオキ母は、マンガに全然関心が無い、どちらかというと好まないタイプでした。母だけでなく当時の大人たちは子どもがマンガばっかり読んでいると快く思わない、今の親が子どもがゲームをしていると眉をひそめるのと同じ感じでしたが。でもその母が、姉の『ベルばら』コレクションをサポートしてたなあ。本屋さんに予約してくれてたり。そう! 予約しとかないとあっという間に売り切れちゃう勢いだったので。

宝塚でも舞台化。映画にもなって。宝塚はあまりの人気でNHK総合(教育テレビだったか?)で中継やってたもん。しかもゴールデンタイムだった気がする。

テレビでの『ベルばら』宝塚中継、それがナナコロビヤオキの宝塚初体験でした。幼児のナナコロビヤオキは、オスカルをはじめとする出演者のスゴーイ厚化粧、バッサバサのまつ毛にただただビックリ(@_@)した覚えがあります…。

『ベルばら』に流れるテーマは…ズバリ女性の生き方!

ナナコロビヤオキが20代で『ベルばら』読み返したとき思い知ったのは、まさに女性の生き方論議だということ。

『ベルばら』が始まったのが1972年。時代の流れから1972年を基点に日本社会における女性の位置付けを辿っていくと…、

1960年代に女性の解放の声が

NHK朝ドラ『ひよっこ』では60年代の日本が描かれていました。60年代はツイッギーブームをきっかけに「女性はもっと自由に生きよう!」と“女性の解放”が意識されるようになってきました。

戦前の、“男女七歳にして席をおなじゅうせず“の考え方からの跳び出した! というところですね。

1970年代 “キャリアウーマン”という言葉が出てきた

そしてその約10年後。

1970年代アメリカではウーマンリブ運動が台頭。日本でも仕事をする女性を“キャリアウーマン”と呼ぶようになってきたのは、この頃からではないかしら。

しかし、女性が男性と対等に働く、といっても男女雇用均等法施行前。仕事と言っても、殆どの女性はコピー(コピーもなかったか!?)やお茶くみだけの、結婚までの腰かけ。結婚したら辞めるしかなかった…というより続けたいレベルの仕事は与えられてなかった。

マスコミなどの男性と対等の職場でも、何かにつけ「女のくせに!」、「女は引っ込んでろ」と言われていたと思います。今なら即行セクハラ認定みたいなことが横行していました。

それに当時はまだまだお見合い結婚が当たり前。むしろ自分で相手を選ぶなんて“不良”と言われていたと思います。

そんな中で描かれた『ベルばら』のマリー・アントワネットとオスカル・フランソワ。

結婚か、仕事か。それぞれの女性の生き方と葛藤が見事に描かれています。

マリー・アントワネットは“良妻賢母”的生き方

マリー・アントワネットは、ルイ16世の妻でありながらフェルゼンと結ばれることのない恋に身を焦がします。

アントワネットとフェルゼンとの恋は、『ロミオとジュリエット』的だし、『金妻』っぽい。

お見合いで結婚し、子どもも生まれて平凡だけど幸せ。でもこれでいいの? という当時の女性の行き方に漠然とした疑問を呈し、自由に恋愛もしてみたいという冒険心をくすぐります。

しかし、フランス革命で処刑されるルイ16世に対して、
「はげしい恋愛ではなかったにせよ…略…これもまた愛であった…」(参照『ベルサイユのばら』)とか、しんみりと独白しちゃう…!

これぞ昭和の女性の生き方!

池田理代子様は、この作品を20代で描かれたそうですが、ナナコロビヤオキは20代ではこんなに分かってなかったよ! すごすぎー!

オスカルは“キャリアウーマン”的生き方

一方、男装の麗人であるオスカルは、軍人=キャリアウーマン。

大人になってから読んでみると、オスカルの軍人として悩む姿は、上司のパワハラと思い通りにならない部下の間で板挟みになり苦しむ中堅サラリーマンにしか見えません!(笑)

でも自分の理想に向かってまっすぐに突き進むのが、オスカルの崇高な美しさであり、せつなさ。読者は理想通りにいかない己の現実を振り返り、それでも突き進むオスカルの純粋さに憧れと悲哀を感じ、ググッときてしまいます。

こんなキャリアウーマン オスカルも、フェルゼンに恋して良妻賢母的生き方の方が正しかったかもと揺れる…。結婚を取るか、仕事を取るかの当時の女性の悩みを見事に投影しています。

2018年の現在では徐々に結婚か仕事かの二者択一ではなくなってきていますが…社会も少しずつ進化してるかなあ~と。今読むと時代の流れ持感じます。

キャリアウーマン オスカル 実は少女マンガの王道キャラ

仕事を選んだ女子、オスカル。当時の“二者択一”文化としたら恋は諦めのハズですが…オスカルはなんだかすごーーくモテます!

  • アンドレは、オスカルをずーっと見守り献身的に尽くすし。子どもの頃からオスカル一筋だし。
  • フェルゼンには失恋だけど、“一生の友”と最高にリスペクトされる。コレ、実は一番美味しくない? 負けた相手は最強キャラ、アントワネットだから諦めつくし。プライドは一切傷つけられてない。
  • お見合い相手の上品なジェローデルには前々からラブがあったと言われるし。
  • ワイルドキャラで反抗的だった部下アランにも熱烈に愛されている。

女を捨てて仕事に邁進しているのに、周りのイケメン達にスル―されることはない。スル―どころか“最高にカワイイ女子”として褒めそやされ、いつも誰かがオスカルを守ってくれます。

さらには、男装の麗人だから、女性にもキャー、キャー憧れの的。

なーーんにも失ってないし、失ってないどころか全部持ちじゃん! アントワネットより最強キャラです。この調子の良さが、少女マンガの楽しみ、オスカルこそ王道キャラだと思います。

ナナコロビヤオキ娘の『ベルばら』感想

ナナコロビヤオキには小6の娘がいます。『ベルばら』を読んでいたので感想を聞いてみました。すると…

「なんだか、ママの時代のマンガって大げさだね」
「なんで、『愛してる』っていちいち叫ぶのー?」
「なんでいちいち泣く?」
「好きならさっさとつきあえばいいじゃんー」

だそうです…(^_^;)

恋愛も、仕事も、当時より男女が平等になってきてるんだなあ~よかったよかったと実感。

今は2018年。そうだよ!ベルばら当時より50年近く経っています。今の時代に生まれた娘は力強く自由に生きていくでしょうー!